第3428回 例会

卓話

本日の卓話者:法政大学 国際日本学研究所 王 敏 様
演題:「周恩来と日本―日本留学の平和遺産」

 中華人民共和国の「建国の父」といえば毛沢東なのはご存知の方も多いかと思いますが、意外と忘れられがちなのは、「建国の母」です。中国の「建国の母」といえば、<周恩来>という方も多くいるとのことです。本日の卓話は、法政大学 国際日本学研究所 王敏様を招き、日本と中国の国交が正常化されてから50周年となる本年、近代中国の歴史を創造した<周恩来>を学ぶ機会となりました。
 中華人民共和国初代首相である周恩来は、1917年秋から1919年春にかけて、日本に留学しました。時あたかも辛亥革命(1911)から「対華21ヵ条要求」(1915)を経て、五四運動(1919)に至る、中国近代史上未曾有の大激動の時代であった。帰国直前に円山公園、琵琶湖疏水、そして嵐山を訪れた周恩来は、古代中国の治水王・禹の精神が、日本に承継されていることに気付いた。周恩来は、治水家の家系に生まれた人だったのである。「日本には非常に美しい文化がある。」帰国後、周恩来はフランス留学を経て中国革命に邁進し、中華人民共和国建国(1949)後は外交・内政において数々の功績を挙げたが、再び日本を訪れることはなかった。しかし、周恩来は終生日本を愛し、晩年も日本の桜に思いを馳せていたという。こうした若き周恩来の日本における足取りを辿り、日中国交回復の原動力ともなったその日本観形成が解き明かされました。